老夫婦の妻は、街の「小さな葬儀屋」さんでの葬儀を望んだ。
「知り合いも無い街で、肩を寄せ合って生きてきた。」
「兄弟、親戚とも縁遠いし、子供もいないから、火葬だけで質素に済ませたい。」
本当に小さな葬儀屋さん。
霊安室と、和室だけ。
枕経も無く、死後24時間経過後、火葬場の空き具合で予約を入れて・・・・
およそ2時間後。生身は、乾燥した骨に。
83年という年月を生きた証は、あっけない位に "無" に帰した。
夫は、車椅子姿で妻の最期を看取り、妻の最期を見送った。
残されたアルバムをめくり、妻の幼かった頃からの姿を目で追う。
枯れたと思った・・・涙は流れる・・・・
簡素であっても、たった一人で切り盛りする葬儀屋さんは、心強い。
その道25年のベテラン。経験が、先々の心配りにつながり、安心感がある。
ご遺体に敬意を表し、ていねいに親族に寄り添う。
夫と、親しくしてくれたご近所の方で、つつましく出棺。
少ない人数でも、淋しさは無い。
妻のお骨は、菩提寺に届けられ、共同墓地に埋葬される。