妻が亡くなって十日余りが過ぎた。
「どこ行ったんだろか?」
「いつ帰って来るんだろうか?」
看取った、見送った・・・・記憶が混在。
「何でも〇〇(妻の名)がやってくれるから、困ったことはないのう。」
「一人になって淋しいから、困ったもんだ。」
「話し相手が居ないのは、淋しいもんだ。」
10歳上の姉さん女房。お喋り。
無口な夫相手に、一人しゃべりが常だった。
「あんたなんか、耳も遠いし、何にも答えないし、つまらんの。」
夫には、妻のおしゃべりは、BGM・・・・安心だった。
「食べるもんが、なんもねえのう。」
二人でつまんだ、煎餅や駄菓子で、口さみしさを補う。
施設内の自動販売機に通う回数が増えた。
日中、共通の場、リビングのソファが定位置に。
会話が増え、体操時間の参加を始めた。
「なんだか、解放されたように見えます。」と施設のスタッフ。
暗くなると、施設内を動き回る。
「いつ帰って来るんだかのう・・・」