91歳の母の居場所を探しあぐねている。
窪 美澄著‥‥‥‥「じっと手を見る」
タイトルが目に飛び込んだ。
ここに、わたしの気持ちを静めてくれる回答があるかもしれないと。
主人公は、若くして「介護士」を選んで生きていく女性。
介護の世界の理不尽さは、想像を超える。
今、まさに91歳の母の施設入所に関連した問題の渦中にあり、
その前に叔母夫婦のサポートをして二人を見送った経験から、
「死」が身近だと体感できる。
二十歳前後は「死」の予感すらなかったし、
親がいつか老いると想像も出来なかった。
幼くして両親を交通事故で亡くし、祖父の手で育てられ、
いつか祖父を介護したいと就いた介護職。
これで食いっぱぐれることが無いとも捉えて。
祖父を介護することなく亡くし、別世界の人間との出会いと、
その立場の人物の視点描写もあり、混沌とした世界の存在が、
物語を立体的にしていく。
生れながらの "持ち物" (生まれた環境の経済力)で、生きる世界は判別されるかもしれないと改めて思うと同時に、それを幸不幸で判別も出来ないと感じた。
「介護職」は、心も身体も蝕んでいくかもしれない過酷な職業ではないか?
もっと手厚い報酬や、体調管理のシステムが必要性が胸に迫った。