母が好きだった。
抱っこしてほしかった。
頭をなでたり、手をつないでほしかった。
いつもわたしをみてほしかった。
ものごごろついたとき、二つ下の弟が母を占領していた。
弟をにくんだ。
わたし自身、二人の子(しかも母と同じ長女と長男)を産み育て、手がかかる方の子やトラブルを抱えている子に手をかけ目をかけるのは当然のことと解る。弟は4キロ余りの体重で生まれ、半年後には8キロくらいになり1歳児くらいの大きさになっていたらしい。身長150センチに満たない母はおんぶの度に、肩で息をしていたという。男の子は当然のようにやんちゃだった。
「ねえちゃんだから我慢しな。」
「ねえちゃんだからめんどうみな。」
「女だから手伝いしな。」
「Kは長男だから大事だ。」
そんな時代であり、そんな世代の両親だった。にくもうが、恨めしがろうがどこにでもあると、今では思える。
今、母は86歳で一人暮らし。わたしは毎月片道5~6時間かけて4泊5日ほど滞在し、母をサポートしている。夏は1ヶ月余り我が家に来てもらう。1,2月は県境の雪で車の運転が心配なので通えないが。まだ一人で、頑張るそうだ。
一度、弟のところで一冬過ごした際、もうこりごりと言っていた。でも、弟すでに50台なのにあの子はよくやっている、もう心配ないと褒める。彼は年に2回位、1泊か2泊する。あとは、ときおりレトルト食品や懐炉を送っている。一度、1泊2日の温泉旅行に連れて行ってもらったと大喜びで連絡してきた。
わたしは、1泊2日どころか2泊3日の温泉旅行も4泊5日の沖縄旅行もプレゼントしている。
息子は得だ! 娘の半分もやってないのに、10倍くらいに喜ばれる。
あるとき「おまえも息子のほうがかわいいだろ。」と。
そうだったのか・・・ 世間でも、母親は息子のほうをかわいがるとはいうし・・・
わたしのなかで、娘と息子は、かわいさのベクトルが違う。で、どっちも大切でかわいい。そもそも、長男だからと息子に老後を託す気がないからかもしれない。
が、母は老後は弟が面倒にてくれると思っていたのに、あてがはずれ・・・
「子供なんか産むんじゃねかった!」「こどもなんかいらんかった。」
「金かけて損した」と。
身長が140センチに萎み、こころまで萎んだと感じた瞬間だった。 続